不倫慰謝料の示談が無効になるケースについて
1 不倫慰謝料請求に関する示談の効力がなくなる3つのケース
不倫をした配偶者またはその不倫相手に対して不倫慰謝料請求をし、示談をしたとしても、法律上示談の効力が発生しない場合や、取り消しができる場合があります。
示談の効力がなくなってしまうケースとしては、①公序良俗に反する内容が含まれている、②当事者が合意していない、③取消し可能となる事由があったというものが挙げられます。
以下、それぞれについて説明します。
2 公序良俗に反する内容が含まれている
示談書の中に、社会的に著しく不当と考えられ、一般的な常識において許容できない条項がある場合、その条項は公序良俗違反として無効になります。
たとえば、相場を大きく上回る法外な不倫慰謝料の金額を定めている場合や、勤務先を退職することや遠方へ転居することなど、人権に大きな制約を加える条項が含まれている場合、無効と判断されるおそれがあります。
3 当事者が合意していない
示談は、法律的には和解契約であり、当事者同士の意思で合意することで成立します。
しかし、不倫慰謝料に関する問題は、当事者の親族などが介入するケースもあります。
あまり多くはありませんが、当事者でない者が示談に関する話を進め、示談書を作成したとしても、当事者本人が意思表示をしていないのであれば示談は不成立となります。
4 取消し可能となる事由があった
民法上、示談の際の意思表示が、詐欺、強迫、錯誤に基づくものであった場合、示談は取り消すことが可能となります。
相手に虚偽の事実を伝えて示談に応じさせた場合、詐欺に該当します。
暴力や不利益の告知によって合意を迫ったような場合は、強迫になり得ます。
不倫慰謝料に関する請求は感情が強く働く類型のものであるため、示談書を作成した後になって、脅迫されて仕方なく示談に応じたという主張がなされることは実際にあります。
事実誤認の元で示談に応じた場合も、錯誤に基づく意思表示があったとされ、示談が無効になる可能性があります。